断食について(9) 西勝造

断食について(9)

西勝造

急性疾患の場合における断食

消化されない食物は発酵を起こして、毒素の集塊をつくり、それは多かれ少なかれ、吸収されて患者を更に激しく毒し、且つ疾病に陥らしめるのである。かくして横隔膜の下に、真実の糞便停滞がつくられることとなる。これを宿便と言うのである。この糞便停滞は、その近隣につくられる炎症とその他のものよりも一層危険なのである。

こうして発酵して腐ってゆく食物の堆積と、それから生成される毒物を駆逐するには、勢力(エネルギー)が不必要に消費されることとなろう。しかるに自然は勢力を保存しようと努める。自然が何故活化機能を一時停止させるかは、全くかかる情勢の存在するためである。有機組織体に強制して、その勢力および注意を賦割して治病の仕事と活化管から腐敗を除去する余分な仕事をおこなわしめるのは、ほとんど犯罪に近いことになる。

唯一の適正な仕事はと言えば、それは活化器官にこうした不用物を渋滞させないようにすることである。自然は、身をもってかかる必要のあることを極めて力強く具示してくれるのである。つまり病人の一切の食思を断つばかりでなく、どんな甘そうな(*旨そうな?)料理でも病人の味覚に訴えないようにするのである。心臓、肝臓、肺臓、腎臓、諸腺等が、どれだけの量の仕事をおこなうかは、主として、摂取した食物の量によって決定するのである。しかりとすれば、疾患の場合に、摂食して、それらの器官や胃腸に余分の仕事を負わせる必要がどこにあろうか、かかる場合には、これらの器官は既に手一杯の仕事を負われているのではなかろうか。自然の要求するものは生理学的休息であって、生理学的過分な仕事ではない。自然が休息を要求するのは、それが必然的に必要となったときである。それにも拘らず、刺激物を与えたりあるいは栄養を給与したりして、器官に余分な仕事の遂行を強いる必要がどこにあろうか、一時食物を断つことこそ、生命の全機能に対し、最も完全な休息を与える所以でなければならぬ、それが断食なのである。

疾患の場合においては、身体は、毒物の集塊に取り巻かれているのである。したがって健康を回復するためにはまず以ってこれを取り去らねばならぬ。病人に対する処置は、全ての毒物の吸収を外部から阻止することは以って、1つの原則としなければならぬ。しかるに疾患中に食物を与えることは、この原則とも全く反するのである。つまり食物を与えることは活化器官内に、腐敗してゆく動物性および植物性物質を絶えず充満させておくことに他ならない。しかもこれらの腐敗物は、疾患の原因をなす既存の毒物に加重されてゆくのである。

毒物の除去が、回復に不可能(*不可欠?)であることは言うまでもない。生理学的休息、つまり断食によるほど実効的にこの除去を促進する方法は他にないのである。断食中においては、排泄の過程は、その最高効率を発揮する。腸も、皮膚も、腎臓も、肺臓も夫々、通常のときよりも能率よく、働くようになるのである。従前には活化と吸収との仕事に忙殺されていた活化器官でさえも、排泄の仕事に能動的に従うようになろう。この過程は、海綿に似ていると言われている。健康のときには、海綿(腸)は吸収に忙殺されるのであるが、断食中には、海綿は絞り上げられる。麻痺剤でも用いなければ耐えられぬほど、激しく感じた疼痛も、断食をおこなっていれば迅速に消散し、数日を出でぬ内に心地よくなるであろう。つまり急性疾患は、遮断せられ、患者の気持ちが、よくなるのである。私は、3日または4日の断食後、ほとんど耐えられなかった急性関節ロイマチスの疼痛が消散し、患者の気分がよくなった事例を目撃している。つまり熱は急速に低下し、炎症も速やかに解消したのであった。たとえ2日ないし3日の断食をした後でさえ、患者が正しい食生活をしてさえくれるならば、いかなる急性疾患であろうとも、断食を直ちに勧めるのであるが、今は戦時下でもあり、いつどんな非常時が突発しないとも断言できない今日、余程の決心の堅い意志の強固な者でないと断食中に生命の危険を他より襲われた場合は精神異常でも起こされては一大事ですから、それに代わるものは寒天断食法であり、生野菜食なのである。

腸チフス患者も、発病と同時に断食をおこなえば、容態はがらりとよくなり、他に腹部に味噌泥を貼ること。脚湯を施して、レモン汁なり番茶を飲み、1日1回の浣腸をおこなって、便通をつけ、高熱があれば胸部に芥子泥を貼って発赤をさせる。そして空気の流通をよくするという方針さえとれば、絶対に心配することはなく、4、5日で回復してしまうのである。患者は病気だというのに気分はよく、また極めて迅速に回復するので、知人や肉親の者は、あれはチフスではなかったのだなどと言う者さえあるので、私は必ず、チフスと感じたときは医師に血液の試験を依頼してくれと申し込むのです。また必ずチフスと決定したと通知を受ける前日か前々日に、下熱し回復しているのを常としている。

西勝造 「健康科学」 第8巻第1号 昭和19年5月15日発行

コメント

タイトルとURLをコピーしました