断食について(8) 西勝造

断食について(8) 

西勝造

断食の期間は幾何(いくばく)とすべきか

断食をする日数は短くても効果があると主張する人と、長いほど効果があると主張する学者や経験者があるので、迷わされるのである。それが相当に長い年月たとえば30年の長きに亘って断食道場を経験し、常に50人以上、80人多きは数百人を入寮せしめて大繁盛を極めている寮長があるかと思えば5人ないし30人を単位として、入念に1人1人を十分に観察しつつ、疾病の経過と断食の長短を看視しつつ、研究を兼ねつつ、専門医を招聘して西洋医学上の診断も加えつつ、考察せる寮長、医師にして学位を有し、断食寮を経営せるもの、それらの人間の間において断食期間の長短に関する論争は、今日に至るまで尽きない有様である。かかる論争は問題に対して光明を与うるよりも、却ってこれを激化昏迷せしむるものである。要は個々の場合において、それに即応して決定すべきである。しからば何故に自称大家なるものが、各自の決定的意見がないかと言うに、「足」についての知識がないからである。「足」こそ心身二面に重大な関係のあることを知らなければならない。足に関する世界各国、古今に通ずる文献を読破し、了解し、これが人体に及ぼす精神上にいかに影響を来すものか、肉体上に及ぼす力学的の作用が内臓にいかなる連絡を及ぼすものであるか、これひとえに「足」の強弱と既に損傷せる場合と傷害を来さんとしつつある場所とによって同一の疾患で同一の症状にて一方は3日間の断食にて治れるに、他方は3週間に及んで未だ食欲も起こらず、回復の徴候が未だ見えない、これでは更に追加しようかなどとここに長期論者の根拠となり、中には5日間断食にて回復せる例を見ては短期論者となるといった変調があるのである。そこで一般論としての健康目的の断食法をここに創定するとなると、男子の場合においては最初に2日間をおこない、一旦ある回復期間を経過し、第二次として4日間、第三次として6日間、第四次として8日間といった具合に進めていく、女子の場合は、最初に3日間をおこない、次は5日間、7日間、という具合に進めていく、つまり断食アチドージスを緩和しつつ日数を長くしていく方法を採ったのである。その間、故障ある脊柱とか、不正の四肢、足疾を治すことを指導するといった方法なるが故に、断食の日数に長短などのあるべき道理はなく、必要とあれば30日、40日、70日、80日、90日と最大限3ヶ月までは差し支えなく指導のよろしきを得さえすれば本断食として長期をしなければならない場合もあり、また短期にて目的を果たすものに徒に長期をおこなう必要はないのである。

急性疾患の場合における断食

急性疾患の場合において、断食をおこなうべき必要のあることは、いまさら言うまでもない。食欲不振、吐き気、嘔吐および食味の欠乏が起これば当然、食物を摂る必要はないのである。食気がないのは自然は食うに及ばずと教えているのである。急性疾患の場合に食物を摂ると、どういうことになるかを調べてみよう。患者や医師が、第一に気付くことは、症状の昂進である。熱は高くなるし、脈拍も増高し、疼痛やその他の症状も甚だしくなってくるのである。つまり患者は、不必要に甚だしく苦しめられることとなり、その近親者も、不必要な憂慮に悩まされるのである。かかる状態の下において、食物を摂取しても、それは消化せられない。それは自然が消化器官の機能を一時停止してしまっているからである。これは自然が、治病の仕事に専念するためには止むを得ざるところである。通常の場合ならば食物を消化し、吸収し且つ同化する作業に消費せらるべき勢力は治病過程を遂行するために使用せられるのである。この点においては、胃および腸の筋肉も腕の筋肉と同じ条件にある。

消化液はほとんど全く欠如している。たとい僅少の消化液が存在していても、その性能は劣悪を極めているので、少量の食物でも適正に消化し得ないであろう。消化力の欠如や消化液の欠如と並んで、食物に対する鋭敏な味覚が失われる。かかる味覚が正常の消化に不可欠であることは言うを俟たない。疼痛は消化と分泌とを禁止するし、熱もまたこれを禁止する、炎症もまた同じである。

摂取した食物が消化されなかったとすれば、病める男子または女子に対して、これは果たしてどんな価値を持ちうるであろうか、70kg、80kgの体重者がチフスに冒されることがあろう、現代医学の手当を受けたとすれば、この場合、たといどれだけ多くの栄養を摂っても、体重を失っていき、疾病が治った後でも、罹病前と全く異なって痩削してくるであろう。事実、栄養を多く摂れば、それだけ疾病を増悪し、疾患が長引けば、いよいよ体重が減じてくるであろう。摂取した食物が害を与えるのみか何らの裨益も与えないということについて、これ以上決定的な証左が果たして必要であろうか、チフスについて言い得べきことは、他の疾病にも西洋医学の手当をするという立場から言うと皆通用するはずである。

この場合に皇洋医学では健康体なるが故にチフス菌に対する今の疾病と称する症状を呈するのであって、却って、これが療法として逆用するのであるから見方は自ら違うものであるが、今は現行医学のほうから見た疾病罹患者として述べておく。

西勝造 「健康科学」 第7巻第12号 

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