断食について(6) 西勝造

断食について(6) 

西勝造

断食中の飲水

断食を主張する人々、医師にしても又は断食指導者の多くの者は概ね、断食中は多量の水、特に生水を飲めと説いている。ところが、そんなに多くの水は必要もないし、それから受くる裨益もないのである。要は渇きの本能に従うのがよい。渇けば水を飲むこと、渇かなければ飲む必要はない。

断食中においては水の欲しくなくなることが普通である。それは多くは大小腸内に溜まっている古い糞便のためである場合もあり、常に飲用している水が「硬性」であることもある。硬水は平常の食物摂取中においては味のよい感じのするものであるが、断食中となると、鋭い味が感じられて口に合わない、そういう場合には蒸留水を用うるか、またはコップ1杯の水に2、3滴のレモン汁を加えたものか、クリマグのごとき水酸化マグネシや2、3滴を入れると軟水になる。断食中は水を飲むがよいか飲まないほうがよいかと言えば、それは飲むほうがよいのである。ところが、それが飲めないというのは、どうしたことかと言えば腸壁に癒着している古い糞便とか砂便あるいは血液すなわち黒便これらを一括して宿便と言っているが、その宿便が剥落して腸管を閉塞する場合には逆に嘔吐するようになり、宿便の剥離した部分が炎症を起こして発熱するときなどはガスが逆上して、口腔内が乾燥して、水を飲みたいのだが、それが嘔吐気分で、飲むことができなくなる。のみならず舌に苔が積んで甚だしいのになると一夜の内に1分位(約3ミリ)の厚さの真白な舌苔があたかも酒の糟のようなものが堆積して、どうしたものかと質問を受けることが度々あったが、そのままにして無理に剥がしたり削り取る必要はない。自然に取れるまでにするがよいと常に返事をするのである。中にはまた5合以上(1リットル)の粘痰を吐いて長年の喘息が治ってしまったのがある。そういう人も水は飲めなかったが、飲むほうがよいならば如何にして飲むかと言うに、それは足を温めることである。できるだけ湯タンポを用いないで、脚袋か温湿布で足全体を温めることにする、そうすると水が飲めるようになる。水はできるだけ飲むほうがよいからとて無理してまで飲む必要もなく、飲むときはチビリチビリと少しずつ飲むほうがよい。

断食中の浣腸

断食中には1日1回は必ず浣腸をしなさいと私は述べている。1日の1回以上は必要でない。日本では最近こそ医師の中にも断食を理解し推奨するようになってはきたが、未だなかなか全面的に了解したというわけにはいっていない。反対はしないが進んでまではやらせないという程度の理解振りである。10年前は断食などするのは非科学的で殺人的だとまで罵られたものであった。日本医事新報なども私のポンチ画まで描いて悪口を載せたものであった。全く夢のようである。それから4、5年経つと彼方此方の医大では断食実験で学位論文を請求するといった有様で、今では5日や7日の断食は歓迎されている状態である。ただくれぐれも注意することは飲めたら水を飲むことで、飲めなければ飲めるようになるまで飲む必要はないということを知らなければならない。しからば飲めないのはどうしたことかと言えば、それは通じが止まったからで、宿便が出ないからである。それ故、大切な水が飲めないのである。それを飲めるようにするのは浣腸である。だから1日に1回は浣腸をすべきだと言うのである。ハッザード(Dr. Hazzard)博士や、カーリントン(Carrington)その他の一派は、断食中には絶対的にとは言わないが、便通があってもなくても1日1回だけは軽くともよいから浣腸をするがよいと述べている。自然を尊ぶ西式から言えば浣腸などすることは不自然ではないかと問われる向きもあるが、第一断食するということが自然ではないので、疾病が重態となって食べられなくなってから断食をするので、これは自然とも言える。しかしよく考えると疾病をして重態に陥れたということは、人間として手抜かりであったとも言えるから、真の自然とは言えないのである。疾病に罹るということが、その7割以上は宿便から起こるので、宿便が存在するから脳中枢神経が麻痺し、その部分が多くは四肢を司る神経系統なるが故に人間に限り、手足が冷えると称して足袋を履き手袋を用いたり、足先に湯タンポを入れたり、火鉢に手を翳したりするのであって、自然界の動物が手足が冷えるからとて四肢を火に差し出すなど見たことがない。これが人間と動物との異なる著しい点であろう。手足の冷えるのが、その根本は何によりて招来されるかを研究すると、それが宿便であるとわかってきた。宿便なるものは元来どうして溜まるものかといえば、腹部を温めるからであると知れた。腹部は何が故に温めるかといえば、それは過食し美食しいわゆる暖衣飽食するからである。ところが国を揚げての大戦争中で飽食も暖衣もできないという、真に飽食も暖衣もしないでおられる位ならば疾病などに罹るものではない。物の十分あったときに飽食したから、宿便を溜め、宿便を多量に停滞させているから手足が冷える。手足が冷えるから、全身が寒さを余計に感ずる。だから身動きもならないような重ね着をする暖衣をする。暖衣をするから体温を上昇させる。体温が上昇するからビタミンCが破壊されて欠乏する。そして壊血病に冒されるようになる。壊血病といえば第一に歯が故障を起こす。歯は年齢と関係がある。食物を取り入れる関門の歯がぐらぐら動いたり、抜けたりしては保健上にとって良かるべき道理もなく、第二には肺炎に罹りやすくなる。といった具合に体温を上昇させることは発汗を促して、食塩と水分とを失い、したがって身体の衰弱と尿毒症とに陥る結果になる。してみると宿便が遠因となって疾病に罹るとすれば、その疾病の遠因である宿便を溜めない工面をすることが保健療養の真諦でなければならない。西式が全ての点において、この恐るべき万病の原因である宿便いかにして排除するかを教えるものであって、別項「腹の健康」も「栄養勢力の本質と構成」つまり「生食効果の理論」も、要するに「宿便」を溜めない方法であり、宿便の停滞をしない食物の話である。ところが事実は宿便が在るから断食中は1日1回の浣腸は必要である。

(未完)

西勝造 「健康科学」 第7巻第10号 昭和19年1月15日発行

*ポンチ画・風刺や寓意を込めた、こっけいな絵。漫画。

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