戦時下の食生活と保健 西勝造

戦時下の食生活と保健

西 勝造

生食

今回のごとき非常時に対しまして、各方面に食糧問題がかなり重大問題となりつつあるようであります。この際に当たりまして私の提唱します新食生活と保健問題の理論はなるべく省くようにいたしまして──またそういう方面はそういう方面で別の機会に譲りまして、簡単に申し上げますと、もし玄米でありますと、1日私は8勺でたくさんであります。普通人で1合あったら十分でございます。それから労働者ならば、1合5勺ないし2合でよろしゅうございます。どうして食べるかと申しますと、それは生の玄米を粉にする。挽いて粉にしまして、うどん粉みたいにいたします。私の1日8勺と申しますのは挽きますと約1合2勺位になります。それを私は朝食をやっておりませんから、昼と晩に食べるだけでございます。それから生の野菜を副食物として100匁を追加いたします。つまり376gに当たります。種類は3種類以上──たとえば大根とその葉っぱ、それに人参なら人参を擂り潰します。今まで煮たものを召し上がっている方は、最初擂り潰したのを半年位なさると、それからはそう完全に細かくしなくてもよい。これは専門家から相当非難を受けました。何となればカロリーに換算しますと、わずかに500ないし700カロリー位になります。それで身体の目方も減らなければ健康上何ら差し支えがない。もし生野菜ばかり摂る場合には約300匁ないし350匁でよろしゅうございます。つまり1日1100グラムないし1300グラムで結構です。それから野菜と玄米とを摂るときは玄米が1合、7分搗きでも結構です。7分搗きですとちょっと野菜を増やす。

カロリー

それは熱力学の第二法則の応用であります。今までは2400とか3000カロリーとか申しますけれども、生のものを食べますと、ほとんど5分の1、4分の1でよろしいのであります。二木博士は玄米食を唱えられ、生きているとおっしゃるが、結局は煮られるから死の食物です。私は生のままをただ砕いて食べる。これは必ずしも絶対の玄米でなくてもよろしいのですが、玄米がだんだん白米になればなるほど、他の副食物に考えを及ぼさなければいけないということだけをご承知おき願いたい。しかしながら白米を粉末にしたらなおよかろうと言いますけれども、白米を粉末にいたしましたものを食べると消化不良に陥って、とんでもない浮腫に陥り誤りを起こしますからこれもご承知おき願いたい。一番理想は生の玄米であります。玄米は洗う必要がない。そのままで結構であります。

今や非常時下であります。一朝空襲を受けたというときには、いかに日頃信頼されている医師たりとも、自分のほうの防衛にかかってしまって、到底あなた方の面倒を見たりするようなことはありません。まず第一にガスが止まる、水道が止まる、電気も止まる、交通も遮断され、配給もうまくいかないというときに当たって、あなた方はどうなさるでしょう。そのときに当たりまして、生のもので日頃の半分の配給でもよいということがわかったならば、少なくともこれを練習なさる必要があるのではないでしょうかと考えます。

そこで最初の1週間は非常にまずい。それはてんで問題になりません。次の1週間で少しは味が出ます。次の1週間が来ますと、こんな旨いものをなぜ早く教えてくれなかったかと申されます。第3週目が参りますと牛肉を思えば牛肉の味がし、鶏肉を思えば鶏肉の味がする。おいしいと思うものの味を味わうことができます。その味というものは到底人様に申し上げることはできません。生のものを食べていると、第一歯医者に行く必要がない。炭もガスも要らない。生野菜の泥食は難症の癌が治ってしまう。もちろんそれには裸療法という療法を加えます。これを加えないと癌は治りません。それは後刻健康法のときに申し上げます。食糧問題としてはまずそういうことであります。乳癌の奥さんも、初めは嘔吐してしまってどうしても食べられない。ガダルカナルの兵隊さんを思ってください、ネズミを食ったのですぞと主任が言ったら、目をつぶって飲み込まれました。その位初めは辛い。しかし導きようによっては辛くない。ミカンの皮、干柿などを入れると、こんな旨いものはいつでもよいということになる。風邪などを引かれたときには、生野菜を5種類──5種類と申しますと、根は根、葉は葉と1種類として勘定する。種類を多く交ぜるのは食物の持っているお互いの長所と欠点とを補い合うのです。ですから種類は多い程よい。しかし、健康体の者が空襲を受けたときは、配給米を1日1人当り1合、ないし1合5勺を粉末にしてそれに番茶を水に入れて、それを飲む。茶殻は擂り潰して、食べることにする。3日間でも5日間でも差し支えない。これは戦時下の食糧問題でございます。

怪我のとき

それから怪我をしたときにはどうするかと言いますと、手足の怪我でも出血するのを包帯で巻いて、上にあげて振れば治ってしまう。西式では黴菌ということは1つも考えに入れておりません。黴菌を認めないということについては、南から帰ってこられた医師の方が憤慨なさる。マラリヤを認めないか、認めません。病気の原因というものは、一酸化炭素と宿便に因由すると見る。ですから根本において考えが違っております。しからば手や足の怪我ならば包帯して上にあげて振れば治るが、身体に怪我したらどうするか。そのときも手と足を振れば治る。なぜ治るかと言うと、これは理論は非常に難しいが、私共の身体には動脈管と静脈管を繋いだ毛細血管というものが51憶本と勘定されている。そのうち、手と足に38憶配置されている。つまり全身の動脈と静脈の毛細血管は、手足に7割以上配置されている。鯉の絵で有名な高木古泉先生、この方が青山で電車と自動車とで大怪我をされて、青山のさる病院に収容されました。人事不省で80何ヶ所も縫った。眼が覚めると、奥さんに電話を掛けてきてもらった。奥さんが来るとすぐ西のところへ連れて行けと怒鳴った。院長は驚いて、お気の毒だが頭に来た。この怪我をして西先生のほうへ連れて行けというのはよほど脳が狂ったの違いない。奥さんはどの位かかりましょうかと言うと、どうしても3ヶ月は入院しなければならぬと言われた。それから自動車に乗って私のほうの療院へ連れて来られた。結局手足を振るということで12日目に退院全治されました。3日目には勝手に糸を抜いてしまった。それは閑暇さえあれば寝ていて手足を上にあげて振る。これは毛細管現象発現法、略して毛管運動と言いますか毛細管現象を起こすのであります。これは保健療養の六大法則の第4として朝夕、1、2分間ずつ、おこなうことにしてあります。この理論についてはもう私は18年前に公表いたしました。彼方此方のあらゆる医者(*2文字印刷切れ)最初は随分その筋からも迫害を受けましたが、私は平然として、あなた方が私を虐めると、将来あなた方が後悔する時期が来ますよ、罰するなら罰するがよいと平気で人々に推奨するから手が付けられない。真理は力です真理は空です。何回もその筋から召喚を受けましたけれども何日も青天白日であります。医療行為妨害とか医師法違反と言われる。何故かと申しますと、根本において理論が違う。私の調書は何しろ口を突いて外国の沢山の参考文献が出るし、第一調べる人が堪らなくなって、これは兎に角従来の療術師のものと違っているということになり、結局、医師の見放したものに西式の指図をすれば、それが違法だと言う。そんな薄弱の理由では、青天白日になるのが当然であります。この際でありますから一朝爆撃を受けて怪我をした場合には、日頃信頼されている名外科医も来ないのですから、私の方法の心得だけは持っていらっしゃることが必要ではないかと思います。

疾病原因の三大因子

それでは人は何故病気をするかといえば、次の三大因子、水分出納、塩分出納、生死出納ということでございます。この3つが完全におわかりになりましたならば、もう病気をするということは無いのであります。余程低能でない限り病気はしないという結論になるのでございます。これがわからないと、医者自身が病気をする。他人の病気を治すことを職業として自分自身のみならず、家庭の者まで病人にしてしまうのはこの3つがわからないからであります。結局この三大因子は病気になるならぬの基礎となるのでございます。

然らば水分出納とか塩分出納とかいうのは何処の医学かと申しますと、日本医学でございます。日本医学と申しますと、どういう医学があるかと言いますと──実は私は三井に長く勤めておりまして、三井の古い方々に申し上げた当時は実は、そんな日本の古いものを持ち出しても相手にしないというので、外国のものばかりを述べたのですが、我が国には神遺方という日本医学がございます。

日本医学

この神遺方というのは、その序文に

「首乃卷波武内宿禰乃定牟流乃法竝爾津守直等乃家爾傳乃法乎修撰美其次乃二卷耳波

大己貴神 少彦名神古乃二柱乃神乃造里玉處乃藥乃方今爾諸國乃神社竝國造縣主乃家耳傳來里民家爾遺里秘久世留乎聚天各乃病爾與衣驗有乃方乎撰美誌寸也。」醫博士従四位上丹波宿禰康頼撰

(読み方)

「初めの巻は武内宿禰の定むるの法並びに津守直等の家に伝ふるの法を修め撰みその次に二巻には 

大己貴神 少彦名神古への二柱の神の造りたまふ処のくすしの方、今に諸国の神社、並びに国造県主の家に伝え来り、民の家に遺りかくせるをあつめて、各々の病に与え験あるを撰み誌すなり。」

とありまして、なお、本文の冒頭に

「武内宿禰乃言爾許廼美波阿萬乃保乃解都智味豆阿治乎奈伽和多爾以連都伊太須古屠乃多反邪流乎追侫土之底會能那訶美爾萬通比弖倭邪奈須母乃乎耶滿比土以布」

(読み方)

「武内宿禰の言に、この身は天の気地の産物を体内に摂り排すことを常として、その腸内に糞便が纏ひて禍なすものを病と云ふ」

云々とありまして、病気をするということは「便秘」。慢性古便停滞症これを宿便と申します。病気をすると、この宿便が排泄されてしまうので病死者を解剖しても腸内が綺麗であるので医師は気が付かない。それでありますから、昔は古代人でも日本では病気をするということは、結局腸の中に古い滓が溜まるから病気をするというのです。日本医学を専ら唱導した人は、私の故郷の大山の阿夫利神社の宮司を明治初年に致しまして、明治20年6月8日に79歳で亡くなりました権田直助という方です。4代の権田大助という方が現に阿夫利神社の大山講の世話をしておりましたがその御神水を戴いた。それから少年時代から弱かった私が健康になる。権田直助先生の長男、年助宮司から神遺方を頂戴して、今申す西式健康法の土台を成すのであります。

日本医学、漢方禁止

この権田先生は日本医学を唱導しましたが、遂に日本医学というものは漢方と共に禁止された。何故禁止されたかと申しますと、ご承知の通り明治22年2月11日憲法発布の大典に列するがために正に参朝せんとする文部大臣森有礼が西野文太郎のために殺された。年44歳であります。森有礼は鹿児島の生んだ傑物、若くして英国に渡り、後アメリカに留学してから日本に帰り要職に就いた人、日本語を廃して英語にするということを主張した人であります。これは今でも函館にいらっしゃると、当時黒田開拓使に宛てた英文の公文書が今でも残っている(文学博士平泉澄先生述)。兎に角あれだけ偉い人でありますけれども、文明国に付いて行くには英語にしなければ駄目だと主張した。これに意見したのが大使館通訳のホイトネー(一説にはエール大学教授なりとある)であります。あなたが如何に日本語を廃すと言っても、日本には最後には動かすことができないものがある。それは何を指したか知りません。日本には立派な日本語があるのに、それを英語にするということはできない。あなたは日本が英米の属国になってもよいか、あれほど利口な大人物でありますけれども、44歳で敢え無い最後を遂げられたのは、そこに因縁があるのではないかと思います。日本語を廃さない代わりに、あなたは今の日本医学、漢方を禁じて西洋医学を入れることに努力なさい、これが交換条件。そういう交換条件に応じていなかったらそれは差し当たり漢方なり、日本医学は残ったでしょう。しかしその当時、今から6、70年前英語になってしまったら我々は或はフィリピン、インドと同じ運命になっていたのかもしれないと思うと、まったく身の毛もよだつ次第であります。

洋医の功罪

そういう歴史を持った西洋医学は6、70年の間にどういう状態になったか。これは昭和16年3月号の『済生』に、小野豊三郎という医師が各国の死亡統計を出している。人口1万人当たりの死亡数を日、英、独、米、和の5ヶ国、10年間を平均したもの、15歳から19歳、20歳から24歳、25歳から29歳、30歳から34歳の年齢層に分けて現しております。

我が国の医学は世界最高の医学なりと言われておりますが、この統計は何を物語っておりましょうか。実に壮丁は英国の4倍、和蘭の6倍の死亡率を出している。もしこの医学が這入っていなかったならば、今の戦争においても如何なる影響を来しているか、この統計でわかると思います。和蘭は何故成績が好いかと言うと、和蘭人を対照に研究した和蘭医学を和蘭人に応用している。我が国には西洋医学の研究方法の考えが使われている。これを眺めてどんなお心持が致しますか。

ここに明治初年に印刷されました本朝医道百首というのがあります。これは権田直助先生が日本医学の「神遺方」を土台にして作られたものです。その11番目のものが

天乃火氣地乃水穀出納須事乃絶奴所人體能平常

(あまのほのけ、つちのみづあぢ、いれいだす、ことのたえぬぞ人の身のつね)

この歌の意味は食べたものの出納が完全であれば人間は疾病に罹るということがないということです。

一番終りの歌、これは明治天皇の御製の中にも同じ意味のものの御歌がございます。つまり参考になるものは日本のものを土台として外国のものを選び採用せよと仰せ遊ばされております。

水の必要

要するに先に申した水分出納、塩分出納、生死出納、問題はこれに帰着する。この3つを誤りさえしなければ病気はしない。つまり結局水分出納の上において人体に一番水分の欠損をするものは何かと言うと、下痢と発汗であります。下痢や発汗をすると結果どうなるか、これは沢山の文献がございます。下痢をするということは、急激なる脱水、つまり下痢や発汗によってグアニヂンが生成する。グアニヂンが生成しますと中毒するということは、多くの医学文献で見ることができる。ところが多くの医者で下痢をした人に直ちに水を飲ませる人は少ない。ところが生化学をやった医者は飲ませる。今は私共の敵国でありますけれども、私はコロンビヤ大学で地下鉄道を修めて来た者であります。しかしトンネルを掘ることはできても紡績の機械をいぢくりまわすと壊してしまう。私は地下鉄道のことなら同じ工学でありますが、設計することはできますが、私がラジオの機械などを弄らせると忽ち壊してしまう。医学士と医学博士とか言っても健康ということについて研究した医者は殆ど一人もいない。胃なら胃、心臓なら心臓、先年蛙の鼓膜を研究して学位を取った人がある。これが耳鼻咽喉を開業したとて蛙の耳では仕方がない。敢て悪口ではない。私にも医者の親戚もある。知人もあり、今では私が奨めて陸海の軍医になったり、病院に勤務しているものも沢山おります。今は唯沈黙しているようにと言ってあります。

腹に味噌

ついこの間、陸軍少佐の方で慌ただしくやってきて、家内が急に腹が痛いので、さる病院に入れたが腸捻転で直ぐ切らねばならぬが、何とかならぬかと相談されるので、院長の許可を得て味噌を腹部にお貼りなさい。そうして微温湯の浣腸か何か30乃至50ccばかり肛門に注入しておけば便通がある。腹痛が来ましたら、すぐに腰のところを軽く持って魚類の泳ぐ真似の運動即ち金魚運動をすると間もなく便意を催すから便器を差し込むならば沢山便が出ます。医院に帰って医長に話したところ、医長は味噌を貼るのですか、おかしなこともあるものだ、しかしやってみると果たせるかな腹痛が起こり金魚運動をやったらば、多量の便通があって、それで全てが済んだ。今までこういう場合に開腹しなくてよいものを切開しておったことが間々あるのです。先般もある病院で少将の奥さんがもう駄目だというので私が夜の12時頃に呼ばれた。腹膜炎を起こされているのです。駄目だから連れて行ってくれと言うのです。つまり心臓が弱いので手術ができないから見放してしまったのです。私が行くと、院長が私に向かってあなたはどういうことをなさいますかと言われるので、私が腹部に味噌を貼り、足湯をします、そうしますと、腹膜炎が治りますと言った。そしてこの場合強心剤とか、ブドウ糖とかの注射は危険ですと付け加えた。それはいかん。何故いけないのです。足湯は宜しいが、味噌はいけません、味噌の効力は何ですかと院長が質問するから、

味噌の効能

それは5つの効がある。熱を取る、腹水を吸収する、便通が起こる、呼吸が楽になる、小水が出る、つまり腸が動くわけです。それでも院長が反対するので、院長が反対なさるならば私は帰りますが、どうしますかと夫の少将に聞きますと、少将は院長が反対されても、西先生がお帰りになっても自分は実行すると言われまして、その通り実行されたら果たせるかな腹はへこむ、通じは付く、呼吸は楽になる、意識は明瞭になる、起き上がる。朝の夜明けには喜々として談笑されるようになった。帰宅するにも自動車が無かったので、退院が午後の3時になっていたが、このまま退院したら気の毒だというのでちょっと注射一本をされたら死んでしまわれた。そういうことが間々ある。重体の病人に強心剤の注射で10人殺しましたと公言された医者があります。注射までしても助からなかったとも言えるものです。私は医者を攻撃するのではないですが、非常時でございますから、一朝事のあった時に如何に処置するかという話です。

グアニヂン

そこで生化学を学んだ医者は下痢の患者に水を飲めと言う。何となればグアニヂンは構造式(略す)を書きますと、炭素とアミノ基1つとアミン2つであります。いずれもアミノ酸系統です。尿素とアムモニアとなれば問題はないのですが、アミンとかアミノ基となると中毒いたします。一昨年4月静岡の浜名湖の辺り新井町、人口一万百人、アサリの中毒事件がございました。これの原因が少しもわからない。吐き下しを猛烈にやっても水を飲んだ人は皆治った。医者に掛かった人は101名死んだという報告が来た際に依頼されて私は行ったのでした。その時は医者夫婦も死なれ、その時名医が各方面から参集しましたようです。死体解剖の結果、塩基性アミンの中毒を起こしたということがわかった。私は吐瀉という急激なる脱水でありますから、私は最初からアミンアミドの中毒ですと申しまして、私の信奉者は平気で水を飲んだから無事に済んでいるのですが、水を飲むことを禁じられて、何かの注射のみを受け入れた人々の多くは死んだ。脱水によって尿素とアムモニアが出来ないでアミンが生成されるのです。水を飲みさえすれば尿素とアムモニアになるのです。この尿素とアムモニアが出来るということは、我々の生き得る途であります。尿素とアムモニアさえ出来れば我々は生きられる。植物に与えるものは尿素の分解物であります。尿素を作って分解して、それを与えて植物が繁茂する。自分で尿素を作ることが出来なければ、もう既に生存権を放棄したものである。即ち吐瀉して水分を失ったのですから水を飲まなければいかぬ。手足が冷えると言って湯タンポを入れれば汗をかいて水分が欠乏する。汗の中には塩分がございます。ビタミンCも入っていますから両方とも欠乏する。100gの汗をかくということは、この中に塩分が半gと10mgのビタミンCが入っている。我々の体液にはビタミンCが少なくとも大人一人40或は50mg位はなければ壊血病になります。それで寒中は寒いと言うて夜具を沢山着るので発汗します。寒中に朝起きたら水をコップに1杯ずつ飲むと75日の長命をするというのは、汗をおかきになるからで、朝水をお飲みになるだけでも尿毒症に罹らない。夜分寝る前に水を飲む人は夜中に小用のために起きない。

*健康生活大全p90p91より

夜尿症の治った例

最近私は21歳になられるお嬢さんが夜尿症で、縁談が思うようにまとまらない、ご両親からご相談を受け予定表を作ってその通り実行したら18、9日目から治ってしまった。それは雨天の日は部屋の縁側を駆けるか、お庭でも約20分間走るのです。令嬢のことですから1里から駆けることは何なり咽喉が渇く。すると少し水を飲む。コップ1杯を飲むのに1週間も掛かった。そしたらその翌日は1時間繰り下げて10時に駆ける、そしてコップ1杯の水を飲む。11時に駆ける。12時に走る。1時間ずつ繰り下げて走ってはコップ1杯の水を飲む。午後1時からの場合は1杯半にする。そして午後7時の場合は朝の9時のものを1回おこなう。寝むのが午後10時頃ですから、その日は正午に20分駆けて1杯半飲む。それで寝小便が治ってしまった。要するにアミン中毒グアニヂン中毒、言い換えれば尿毒症に罹るから、そういうものが血液内に生成されては、中毒を起こすから自然は捨てさせるのです。私の知った家に96歳になる老婆がおりますけれども、寝る時に水を必ずコップ2杯位飲んで寝られますから一遍だって起きたことはない。1日3升、5升の水を西は飲ませるなどと悪口する医者がある、それは無茶です。私はそんなことは言ったことはない。朝夕10分間左右揺振と腹式運動とを同時におこなって1日中に少なくとも2ℓ、3ℓの生水を飲みなさいと言うのです。これは保健療養の六大法則の第六の背腹運動のことです。私は先年貴族院議員の水野甚次郎氏が呉市長の時に頼まれて、6日間20数回講演をし、5万人の婦人会の方々に呼び掛けた。船が入港したので旅館を断られたので、水野邸の二階に泊まった。二階に便所はない。私は蚊帳も吊らない。戸は開け放しです。3日目位12、3の坊ちゃんが上がって来て、西先生は何処から小便するのかと聞いた。掃除していた女中がそんなことを仰ってはいけませんと言う。隣室におった私が坊ちゃん、おぢさんは二階からなど小便しないよ。5日間泊まっている間に1回も夜中に起きたことはない。水野さんも講演を聞いて成程、夜中に小用などしないのが本当だと肯かれた。何所の女中さんにしてもお隠居さんにしろ随分夜中に小用のために起きられるものだが、私のところに来た女中も初めは夜中に起きもしたが、私が電話や人様と会談して生水を飲まなければいけないと始終言っているので自然と飲むようになるものと見えて、後には起きない。だいたい汗というものは0.3から0.7%位の割合で食塩が入っている。

砂糖が欲しい訳

夏になりますと、1ℓ位の汗をかくということは決して珍しいことではない。食塩がどの位皮膚から逃げるかと言うと、汗1ℓで5g逃げる。5gは角砂糖1個に匹敵する。私は体重15貫目( *1 貫 =3.75kg)でありますが、15貫目の者は1日約15gの食塩を尿中に排泄します。それが3分の1皮膚から失うと言うことは体内でブドウ糖が生成される100%のものが66.6%だけしか出来ない。自然33、3%分だけの糖分が欠乏している訳でありますから、口から糖分を要求することになるのです。その触媒作用の塩分を失うと言うことはどういう結果になるかと言うと、我々の血漿というものは酸とアルカリで中和している。塩素を100としますとソーダは130という割合です。何を食べても炭酸になりますから、炭酸は26位が平均です。硫酸が5、リン酸が2という割合です。酸性に属するものが総計およそ133です。カリが5、カルシウム5、マグネシウム2、これがアルカリ性に属しますのが計142という割合です。アルカリのがちょっと勝っている。汗をかくということは我々の血漿──血液、リンパ液の通計でありますが、この大きな数字が逃げる。アルカリ性のソーダ1容量と酸性の塩基1容量を化合させますと食塩が出来る。

胃病は多い

汗をかいて食塩を摂らないと胃塩酸が出来ないから胃潰瘍になる。だからできるだけ汗をかかない工夫をしなければならぬ。と言って怠けろと言うのではない。汗をかいても食塩の入らない汗をかけばよい。それにはどうするか、それが生食であります。我々は煮た物を食べるために、食品中に自然に含んでいる食塩を無用にしてしまうのです。それがために食塩を摂らざるをえない。何故かと申しますと、私は15貫で1日15gの食塩を尿中から出し、その他に36、7g平均の尿素を出している。ところが水を飲まないと尿中から排泄すべき尿素がどんどん減る、ですから尿素は1000g即ち1ℓの尿中に対して大体22gというのが我々の健康状態です。病気になると初めは多く後には段々と尿素が減って来る。人造肥料会社では1日に尿素を200t、300t生産しますけれども、我々の身体は1日に30gから40gです。それから食塩を失うと胃液が欠乏する。以前双塩療法と言って、ナトリウムとカリウムの比を喧しくナカの比あるいは夫婦塩と言って、無闇に食塩を摂らせるのがあったが、これは汗をかかない人にまでも食塩を摂らせる結果となったので色々障害を起こしたために、石塚左玄先生の食養会も段々淋れてしまった。

恐怖は下痢をする

下痢をすると水分を失う。下痢について今一つの重大問題があります。恐怖をすると下痢患者が出ます。エリヒマリア・ルマルク著で秦豊臣氏の訳になった「西部戦線異状なし」の71頁のところに砲弾の音を聞いて恐怖のあまり、上官も兵も下痢をする話が出ている。昭和12年10月に大牟田で何千という下痢患者が出た。死者も相当出た。それは皆恐怖によって起こったので今以って赤痢菌の皆無な赤痢だと言って医界は不思議がっている。不思議でも何でもない。恐怖によって下痢をするという精神作用を忘れているのが今の弊害です。空襲があって下痢をしたならばそれは恐怖菌という菌であります。

西式健康法の理論というのは非常に広汎に亘りますが、例えば入浴の場合にお湯に入るにしても、お湯に入ってから水に入る、私はいつも最初に水に入ってからお湯に入る、水は酸性に傾き、お湯はアルカリ性に導くのです、だから水と湯と両方をやる。衣類を着ると温かくなる。アルカリ性ですから入浴の最後は水浴です。

四十肩五十肩

それから夏季になりますと雑誌などを寝ころんで読んでいられると手先が痺れる。四十腕五十腕とか四十肩五十肩とか、デュプレー氏病と申します。こういう人の7割は、主人公が奥さんに忠実とでも申しますか、奥さんのほうを向いて寝ていられる。ですから奥さん側ばかりの肩を圧迫する。ですから四十腕、五十腕というのは寝床を代えると治ってしまう。医師はデュプレー氏病のことを肩甲上膊関節周囲炎と言って原因不明と言っている。あちらこちらと転勤する人にはそういう疾患はありません。すべてそういう根本を掴むと、疾病気を治すことも簡単です。

それから3番目の生死出納、これは先程申し上げたように、100gの汗をかきますと、その中に10mgのビタミンCが入っている。ビタミンCの不足はご承知の通り壊血病の原因です、その一番先に影響を被るのは歯がゆるむ、歯槽膿漏とか歯齦炎、これはビタミンCの欠乏です。第二が肺炎、これには胸部に芥子泥を貼る。10遍でも20遍でも貼る。一例は横浜の紅葉坂のところにある小杉病院で、国民学校の先生の3つの子供さんですが、無論、院長が見放したものです。12遍目の芥子泥で、漸く発赤した、痙攣と同時に回復した。次は26回目で発赤して治った例もあり、36回目のもある。最後は必ず痙攣が起こって来ます。26遍貼り変えて治った。芥子泥を26回貼付すると言うことは26時間掛かります。ペニシリンも何も無用です。医者が見放して駄目だと言ったから死んでも仕方がないとか、骨が折れるから、面倒だから、と芥子泥をやらないなどは怪しからない。今は人命が大切だからそう諦めないほうが良いのです。

思った通りになる

今は亡き仏国の名将フォッシュ元帥は『戦争は土地を取られても負けたのではない。退却しても負けたのではない。負けたと思った時が負けなのだ』と言った。『病気でも昏睡に陥ったから駄目ではない。半身不随になったから駄目ではない。駄目だと思った時が駄目なのだ』で死なないとか死ぬとか考えないほうが良い。そんな人は生きられる。一切のもの全て0=(+)+(-)零から生まれたものです。全て空です。万物は「無」から生まれたものです。空=陽+陰また空=肉+心であります。ですからあらゆる哲学、宗教は皆な空に集中する。結論は「空」であります。国民座右銘は「真理は両極の中道にあり」というのが採ってある。これは有名な清濟満之先生の言葉です。中道ですから言わば「無」です。「空」です。両端あっての空です。我々の身体は頭の先から手足の末端まで在りのままそのままが一切無であるべきであります。空であるべきはずです。老子は『道は無より生ず、そして「道」は一を生ず、一は二を生ず、二は三を生ず、三は万物を生ず』と言っている。肉、心、空、これが我々の人空であります。しかしこれは平面に見た場合であります。人空法空は必ず立体であるべきはずであります。朝起きてから食うことばかり考えていらっしゃるようでは真の健康すなわち無病体にはなれない。私は人様に20年近くこうしたお話をしておりますが、未だ嘗て医者の厄介になったことがない。下痢をするということは、下痢をしなければならない条件が体内に起きたから下痢によって害物が排泄されるのですから、起きたことが寧ろ幸いである。下痢には水さえ飲めば治る。熱が出たということは黴菌が侵入したか発生したために殺菌する必要上出たのでありますから、これを逆に利用して逃さない。それによって失うものは何かと言うと、発汗による水分と塩分とビタミンCでありますから、それらを補給すればよい。我々の身体というものはビタミンCが失せるからビタミンBが失せる。CとBが共同して失せると初めてビタミンAとDとを失って肺結核になる。

ビタミンCは生死を司る

身体というものは丁度大東亜戦争前の日本の状態と同じにABCDから危囲されている。ですからCさえ解決すればチャイナとか蒋介石の頭文字はCですから全てが解決する。Cを解決することが健康の近道である。それには結局夜分寝てからでも汗をかかないこと、それから食い過ぎないこと、毎日便通があること、足が軽いこと、鶏でも鶴でもそうですが、食い過ぎると左脚の一本で立ち、得体の知れない物を食べると右脚で立つ。これはジロスコップ(旋転儀)の原理の応用です。私の専売特許にしてあります半球ですが玉のくっ付いている下駄を作っていますが、この下駄で1分20秒直立静止状態で立っておいでになれたら、脳溢血も心臓麻痺も癌もロイマチスもない。これを蓬莱下駄と名付けております。高血圧の人も神経痛の人も立っておれません。1分20秒静止状態で立つことができるということは、660有余の筋肉が交互演奏平衡運動を起こす。酒屋の小僧が両手を放して自転車に乗っているが、あれは傍から見ている程楽ではない。相当全身の筋肉平衡運動をやっている。ですから自転車も適当に乗ると言うことは一種の健康法であります。

西式健康法というのはそういうものを1つの土台として組み立てたのでございます。それは三角つまり一点が「空」で他の二点を「肉体」と「精神」これは平面でありますから空間に一点を設けて「靈」と致します。即ち正三角四面体を作って、これを基礎として全ての方面に展開させたのであります。「生活」と「環境」と「修養錬成」と「遺伝胎教」の4つを1組とした基礎を正しく導くか如何が「健康」ともなり「疾病」ともなり「死」を招いたり唯「生きている」と言うだけの4つの内の何れかになるかと言うことになるのであります。

足の健康は一番大切

「足は万病の基」という書物を10年も前に書いたことがあります。今度の戦争が始まって最終の丸善入荷の新刊に独逸の陸軍軍医のハイム博士と海軍軍医のヴンデルリッヒ博士共著「足の損傷と軍務適応症」と題する書中に、身体中で一番気の付かないところで足が種々の疾患の遠因たり直接原因であることが明瞭となったと述べている。足に関する書物が英米独仏で最近頓に増加して参りましたが、足に故障を起こすと全てに故障を起こす。病気は皆な殆ど申し上げても過言でない位に足の故障である。足が治ると皆な自然に治ってしまう。それは自動車で申しますと、ゴムの車輪に孔が開いていると同じように、如何に堅牢に車体を作りましても、車輪に孔が開いておったら忽ち上体の車体が壊れてしまいます。足を治すこと、出来るなら平らなものにお寝みになる、これを私は保健療養の六大法則の第一としまして、平床寝台、次には第二と致しまして固い枕をする。これは硬枕利用として、第三が常に暇があったなら金魚運動をやる。この運動を朝夕1、2分間実行致しておりますと、便通上にもよし、盲腸炎にも罹らないし腹痛もない。保健療養六大法則の第五に触手療法と言うのがあります。合掌した掌を掌部に当てますと治ります。この寝ていて魚類の泳ぐような真似をする運動をして、もし下痢をしたら水を飲めば治ります。病気をして他人を頼むということは愚の骨頂であります。鼻血が出たらそれは食事が多いからですから、飯を1杯なり2杯なり減らせばよい。手足が冷えて血液がその方向に回らないから結局多過ぎるから出る。ですから病気を喜べということを私は常に述べております。病気をするというものの観念が違うのです。病気を歓迎する必要はありませんけれども、罹った以上はそれを喜んで対応していく。つまりは敵米英を邀撃する心構えであります。それが健康道確立の要素であり妙諦であります。

裸療法

それから裸療法と申しまして20秒裸になる。1分間着衣をする。それから30秒、裸体になる、次は1分間着衣、その次は40秒、裸体となって1分間着衣をする。それから50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒、10秒ずつ裸体の時間を増して遂には2分間に及ぶ。その間は1分間から2分間着衣をする。そうしますると皮膚体内の血液循環が完全におこなわれます。つまり一酸化炭素の生成を防御し且つ消去します。これは面倒ではありますけれども、癌を予防し、また治し、風邪などに罹ると言うことがない。我々は何を食べても結局はブドウ糖になり、酢酸から蟻酸になり、蟻酸から炭酸ガスと水になると教えられてあるが、これは自然界の動物ならば間違いないが、人には間違っている。蟻酸というものの1原子量が加わってこそ、これは炭酸ガスと水の出来ることは確かです。しかし我々は裸体で生活しておる動物ではなく、衣類を着ています。蟻酸というものに対して仮にn分の1だけ酸素が妨げられていると致しますと、これは一般方程式としまして炭酸ガスは恒数で、あとはn倍の水が出来、n-1の一酸化炭素が出来る。ですから一酸化炭素の中毒を起こす。同時に青酸というガスを作る。青酸ガスを作るからチアノーゼを起こす。これは専門家の文献が沢山あります。1936年フランスの医師エストリポー博士の書いた「癌の病理学に関する研究」と題するその40頁に

「我々は各種の疾病の原因に就いて個別的に研究してみよう。さすれば我々は、これらの原因が一酸化炭素という恐るべき名称を持つ毒ガスによって起こるということを知るであろう」云々。

これを発表しましたのは1936年でありますから、今より9年前であります。

我々はこの恐ろしい、あらゆる疾結の原因をなすところの一酸化炭素を消去する助けをしなければならぬ。それにはできるだけ薄着の習慣を付ける。入浴の際にはお湯に入ったら、必ず水を足のほうから入るなり掛けるなりする。後になったら水から入ってお湯に入る、そして水で上がる。私は入浴の際でも石鹸を使ったこともないし、朝でも歯を磨いたこともない。文化生活だと言って多くの人々は病気になる生活をしていられる。言葉は如何にも過敏のように聞こえますけれども、既に十数万の信奉者を有し、多くの実行者があって、今まで間違いを起こした例はない。偶々あったとしても必ずそこに従来の考えが参加したり、また私の意に反する行為、例えば医師が見放したものを私のほうで段々治って行く途中に、注射一本で死んでしまって、私のせいにされたことがあったのです。未だ一回でも取り調べを受けて私の悪かったことなどありません。

生食こそ戦時食であり平時食である

特に生食について満州の古諺がございますから、それを最後に述べます。

葱辣嘴、蒜辣心、韮辣荣一氣辣到脚後跟

つまり葱を食べると歯が達者になる。蒜を食べると心臓が丈夫になる。韮を食べると身体が丈夫になる。遂には脚の後ろの跟にまで及ぶ。荘子の太宗師第六をご覧になると「真人の息するや踵を以てす」踵で息をすることが出来なければいけない。日常心得保健百則の九十九に「踵で呼吸する錬成をする」こと。これが出来れば保健法の結論はそこにある。踵で呼吸するようになったら最早天下に恐るる病気はない。これを以って終りと致します。

(終)

『西会会報 』 第8巻第4号 昭和19年8月15日発行

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